金子みすゞとの出会いは衝撃でした。
優しさと悲しみ、光と影、夢と幻、神と宇宙などなどが蜘蛛の糸のようにからみ合っていました。
川底の小石に触れようとすると不思議なめまいを感じるように、みすゞの詩には何かが揺らめいています。
その何かを私が描けるかどうか自信もなく恐れもありました。
最初に「大漁」に挑みました。みすゞの代表作であり私は感じるままに筆を走らせました。しかしその何かは描けませんでした。
こんなはずではないという焦りと絵描きとしての自尊心もあり、次々と挑んでいきました。
私の日常生活は金子みすゞ一筋になりました。
そして開き直りも手伝ってその何かを私の心の中に棲む何かと同化させました。
たとえば「明るい方へ」は童話のおやゆび姫を思いながら空想の世界を作りました。そのうち少しずつみすゞの何かが見えてきました。
みすゞの小さきもの、弱きものへの限りなくあたたかいまなざしが、生命の尊厳、生きるものへの慈しみを教えてくれました。草も虫も、そして人もすべて等しくいとしいものだということを・・・。
そして、すべての生命は、明るい方へ、明るい方へと向かっていくのです。
彼女の詩の世界と私の作品が共鳴し、命や自然のことを考えていただければ幸いです。
コメントをお書きください