「地獄音図」ーじごくこころねずー


 ● だから新しい地獄絵を描きたい 



                      中 島   潔



襖絵を描き終えて


5年間、全てを忘れて清水寺成就院の襖絵に打ち込みました。

直後に大病が見つかり手術、

そして生還、


力強さを描きたいと思い、

テーマに、日本の祭りや伝承を考えました。


しかし見回すと、暗いニュースがあふれていました。

価値観が変わり、大事なものが失われて行く。

えがくべき他の何かがある気がしました。

お天道様が見ている

 

そんな時、ある人の言葉が胸に迫りました。

「お天道様が見ている・・が死語になりそうです」

その言葉が私に思い出させました。

子供の頃、母に見せられた地獄絵のことを。


誰も見ていなくても、正しいことをしなさい、という母の教えを。

伝えていきたい日本の美しい景色、

そして伝えていきたい日本の美しいこころ、

 

 日本のこころを伝えるための地獄絵

 

この世紀に生まれた画家として、子供に、そして大人に、

新しい地獄絵を見てもらいたい

いま自分が描かなければ、と思いました。

 

「うそを言ったら閻魔様に舌を抜かれるよ、

悪い事をしたら地獄に墜ちるよ」

そんな子供の頃の素朴な視点で描くつもりでしたが、

古くから伝わる地獄絵も見てみたいと思いました。



まずは珍皇寺へ

 

いろいろと見て回ろう、

まずは手始めに、と、京都の珍皇寺をお訪ねしました。

そこで見た地獄絵に心打たれました。

奥深さを秘め、美しくもありました。

 

住職様のお話を聞き、惹かれる理由が分りました。

「戒め」だけでなく、絵には「救い」が満ちていました。

回りつづける生命が描かれ、中心には「心」の文字。

私がこだわり続けて来た、「いのち」と「流れ」がそこにあったのです。

 

 

始めのはずが・・

 

まず手始めのつもりだったのに、もう充分でした。

最初に珍皇寺を訪ねたことは、何かの巡り合わせかもしれません。

 

伝え継がれる歴史の中に連なりたい、と感じました。


完成後の奉納を願い出ると、快くお請けいただけました。



 

身近な存在

 

京都では、今でも地獄絵は身近なものです。

子供が物心つくと家族で見に来るとのこと。

祭りや伝承と同じ、地域に根ざした日本の文化です。

私の描きたい大切なものです。

違うテーマを選んだはずが、同じ根にたどり着きました。 

 

  


後世に残す代表作を目指して

 

それでも一枚目はおそるおそる、筆をとりました。

 

二枚目、三枚目と描き進むにつれて線は伸びやかになり、

生き生きと動き出しました。    



 描き進むにつれて

 

心のあり方を問いたくて描き始めたつもりでした。

しかし、描き進むにつれて見えて来たものがありました。


そこには「救い」がありました。


「いつも自分が描いている故郷の絵が天国」

だから今回は地獄しか描かない

そう決めていたのですが・・・


最後の五枚目に、菩薩地蔵に抱かれて天に昇る亡者を描きました。


廻り繋がるいのちのものがたり


菩薩に目を入れたとき、心が放たれました。




 


 そしてついに

 

4月29日に奉納の日を迎えました。

 

障子から柔らかい光の射すお堂に据えられた地獄心音図は、アトリエで見る姿とは一変していました。

 

 




アトリエでは、独特の強い存在感で見る者を圧倒していた五枚の心根図でした。


それが、不思議な事に、

はじめからそこに有ったような

帰る場所へ戻ったような

自然な空気を醸し出していました。


迎えてくれる、昔の地獄絵があったからかもしれません。





 

 

 

新緑を通る風の中、奉納記念の特別公開が行われました。

 

 

何かに背中を押されるように描いてしまった心音図です。

 

何かしら、小さな想いのかけらを拾って帰っていただけたら・・と祈ります。

 

 

 

「地獄心音図」は、数年の巡回展ののち、正式に六道珍皇寺に奉納されます。

AtelierUme Topics

   ア トピックス

 

 

キジムナファームは沖縄県において国産コーヒーの栽培に取り組んでいる農園です。今回、キジムナファームを心や体に障がいを抱えた子供たちを支援するケアファームとして運営するため、支えて頂けるサポートオーナー様を募っています。

障がいを抱えた子供たちを支援するケアファームの実現にぜひご協力ください。ご支援のお礼の品の一部にうめ吉デザインのコーヒーが含まれています。クラウドファンディングの募集ページからご覧ください。  →サポーター募集ページはこちら

NEW!

「月ぞ流るる」

    作   澤田瞳子

 

平安中期の宮中を描く、澤田先生の最新作が発売となりました。

表紙絵には

中島潔の源氏物語 四十五帖「橋姫 宇治の姫たち」

を使っていただいています。

 

詳しい内容はこちら→文藝春秋

 

お初天神にこいさん登場!

 

お初天神で知られる露天神社で

中島潔の作品がご覧になれます。

露天神社の東門から入ると

左側に見えてきます。

 

シャッターにラッピングされており

年間通して閉まっているので

神社に入れる時間なら

いつでも見ることができます。

 

ライトアップされている時間帯もあるので、近くにお越しの際はぜひご覧ください。

「こいさん」は、

大阪の展覧会の際、地元にちなんだ題材として取り組んだ作品です。

 

露天神社H.P.は→こちら

版画展の最新情報はこちら

中島潔はあとの店H.P.

 

70周年記念缶
70周年記念缶

九十九島せんぺいの70周年記念商品が販売されました。

限定記念缶用に「長崎の風」を描かせていただきました。

九十九島せんぺいオンラインショップ

通常商品
通常商品

 

愛知県瀬戸市にある株式会社建光の新社屋エントランスです。

ホーロー製の「ふれあい」が嵌め込まれました。

茶系の壁によく似合います。

ホーローは焼きものなので、きれいに出やすい色と再現の難しい色とがあるそうです。

「ふれあい」の色味は、焼きものに向いていたようです。

優しい仕上がりとなりました。

◎病院ロビーに花童登場

NEW!

佐賀市日の出町の国立病院機構佐賀病院がリニューアルオープン。

近代的な高い天井のエントランスに「花童」が飾られています。

2700×1800の迫力の大きさ。

機会があればご覧下さい。

日本美術全集に掲載!

 

小学館 

日本美術全集  20巻

ー日本美術の現在・未来ー

        著・・山下裕二

 

「心音 地獄心音図」の中から、

大焦熱地獄・阿鼻地獄が見開きで掲載されています。

(第八章 3.11以後の美術 P.202)

 

第20巻は現代の日本美術の粋を集めた圧巻の編集となっています。

 

 

小学館 日本美術全集

全20巻 1巻 15,000円(税別)

ご購入ページは→こちら

 

別冊太陽 発売されました


平凡社から別冊太陽が発売されました。

美しく、迫力ある誌面になっています!

 

中島潔 

 いのちと風のものがたり

☆ 2015年4月22日発売

☆ 2,484円(税込み)

 

地獄心音図、清水寺奉納襖絵、そして最新の童画、故郷画が満載。

近況を取り上げた写真の数々も、臨場感あふれる製作の背景を伝えます。

単行本 発売!


絵描き 中島潔

    地獄絵 1000日」

 

  西所正道 著

  H&I 出版

 

☆ 2015年4月28日発売

☆ 1,944円(税込み)

 

地獄絵への道のりを伴走する感動のノンフィクション。

地獄心音図の構想が生まれ、育って行く日々を作者の鋭く温かい目で追って行きます。

 

 

「はあとの店」にて販売中

 

京都清水寺成就院奉納襖絵 

風の画家 中島潔が描く

「生命(いのち)の無常と輝き」展 図録

 

 

全国美術館等を巡回し、各地で好評を博した中島潔展覧会「京都清水寺成就院奉納襖絵 風の画家 中島潔が描く『生命(いのち)の無常と輝き』展」の展示作品を中心に収録した図録です。


 

 

 

 

 

中島潔

 

 

 

 

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